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イヌワシ Aquila chrysaetos は 翼を開いた長さが1.8~2.3メートルもある大型猛禽類で 旧北区および新北区に5ないし6亜種が分布しています[1]。
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日本列島と朝鮮半島には ユニークな染色体型をもつ亜種 A. c. japonica が生息しています[2]。
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日本列島では生息数が少ないことから絶滅危惧種に指定されており、朝鮮半島では近年 繁殖記録が途絶えています[1]。
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私たち新潟県イヌワシ保全研究会は 国内有数の繁殖地域-新潟のイヌワシと地域社会との共生を目指して調査、研究及び保全活動を行っています。
ご協力ください

(山岳スポーツ・レクリエーション編)
新潟県イヌワシ保全研究会の調査では、近年、イヌワシの営巣地周辺における冬山登山、トレイルランニングなどの山岳レース、スノーボード、野鳥撮影による繁殖失敗がたびたびおきています。また、冬山登山や山岳レースが繰り返された後、繁殖ペアが観察されなくなった生息地もあります。Spaul & Heath (2017) による研究では、イヌワシは、1km以上遠くにいる人を警戒して巣から飛び出す場合のあることが明らかになっています。イヌワシの繁殖への影響が特に大きい営巣場所から1.2km以内への立ち入りを避けるため、以下のことについて皆様のご理解とご協力をお願いします。
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山入り前に地域のイヌワシ専門家、県、環境省及び林野庁などの関係行政機関に相談しましょう。
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相談できない場合は登山道以外での冬山登山、スキー場外での滑走及びイヌワシへの接近撮影を控えましょう。
引用文献
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Spaul, R. J. and Heath, J. A. (2017) Flushing responses of Golden Eagles ( Aquila chrysaetos ) in response to recreation. The Wilson Journal of Ornithology 129 (4): 834-
ご協力ください

(林業編)
徳川家綱(とくがわいえつな)の時代より、わが国では小さく区分けした山林の木を順番に伐採して薪(まき)や炭、建材などに利用し、残りは回復してから再利用する、子孫と自然に優しい林業を行ってきました。
時は移り、第二次大戦中の利用さらには戦争で破壊(はかい)された街の復興(ふっこう)に利用するため、山の木が大量に伐採されました。山村で働く人を減らさないこと、化石燃料の利用が増えて薪や炭の利用が減ったことなどを背景に、薪や炭を生み出していた雑木林(ぞうきばやし)を伐採し、スギなどを植林(しょくりん)する「拡大造林(かくだいぞうりん)」が行われました。この頃から木材輸入も自由化されたため、国内で売られる木材は安い外材にほとんど置きかわりました。その結果、わが国では林業がおとろえて、植林地を含めた森林は放って置かれるようになりました。また、紙パルプの原料や建材用に、フィリピンワシやタスマニアオナガイヌワシのすみかと彼らの獲物がくらす海外の森林が失われました。放って置かれ、ちょうど良い広さの伐採地が失われた国内の森林では、翼の長いイヌワシは獲物をとりにくくなりました。世界の猛禽類(もうきんるい)が獲物をとれるようにするため、林業を行う方々や木を買ってそれを使う方々には、以下のことについてご理解とご協力をお願いします。
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イヌワシの暮らす山では、皆伐(かいばつ)を控えて群状択伐(ぐんじょうたくばつ)や帯状伐採(たいじょうばっさい)などの小さな面積の伐採を繰り返しましょう。
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イヌワシの暮らす険しい山から採れる木材は曲がっているなど欠点が多いですが、知恵を出し合い使い方を工夫して、地域の木を地域で使って地域の林業を助けましょう。
参考文献
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Kennedy, R. S. (1977) Notes on the biology and population status of the Monkey-Eating Eagle of the Philippines.The Wilson Bulletin, 80 (1): 1-20.
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コンラッド・タットマン(1998)日本人はどのように森をつくってきたのか,築地書館,東京.
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Mooney, N, J, (2000) Appearance Vs Performance; managing endangered Tasmanian Wedge-tailed Eagles in Forestry Operations. Chancellor, R. D. & B.-U. Meyburg (eds.) 2000 Raptors at risk 321-332.
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谷本 文夫(2006)明治期から平成までの造林技術の変遷とその時代背景ー特に戦後の拡大造林技術の展開とその功罪ー.森林立地 48(1)57‐62.