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イヌワシ Aquila chrysaetos は 翼を開いた長さが1.8~2.3メートルもある大型猛禽類で 旧北区および新北区に5ないし6亜種が分布しています[1]。
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日本列島と朝鮮半島には ユニークな染色体型をもつ亜種 A. c. japonica が生息しています[2]。
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日本列島では生息数が少ないことから絶滅危惧種に指定されており、朝鮮半島では近年 繁殖記録が途絶えています[1]。
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私たち新潟県イヌワシ保全研究会は 国内有数の繁殖地域-新潟のイヌワシと地域社会との共生を目指して調査、研究及び保全活動を行っています。
新潟県におけるイヌワシの分布と生息数
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新潟県のイヌワシは 繁殖地と飛来地を合わせて少なくとも20市町村に分布しています.
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近年の生息ペア数は35±5と推定されており(増川 2011) 県単位では岩手県と並んで全国最多レベルです.
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しかし 1990年頃に生息していた50ペア前後(小島 1992)に比べると著しく減少しました。
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これ以上のイヌワシの減少を食い止めつつ 回復をはかる必要があります。
新潟県におけるイヌワシの繁殖成功率
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新潟県におけるイヌワシの繁殖成功率は 1980年代後半の0.7から2000年代前半の0.2に大きく低下しました.
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近年は 行政・企業・NGOの連携による保全活動の成果もあって0.4前後に回復しつつあるものの 県内の繁殖成功率目標値0.57を達成するため さらなる保全の努力が必要です.

新潟県におけるイヌワシ営巣地の特徴
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2017年8月までに、新潟県内の20の生息地で41か所の巣が確認されました。
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巣の標高は200mから1300mでした。
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土台の種類によって巣を分類すると、岩が33(岩穴12、岩棚21)、樹木が7(根元1、樹冠7)になりました。
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岩棚の巣の上には、反り返った岩壁や常緑針葉樹の枝がひさしのように張り出していました。樹上の巣は常緑針葉樹(キタゴヨウ、ネズコ、スギ)の大木の力枝に架けられていました。このような巣の構造は、多雪及び落雪に対する適応又は順応と考えられます。
新潟県におけるイヌワシの繁殖期
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国内に生息するイヌワシの繁殖期は、求愛開始が10~11月、巣造りが本格化するのは12~1月、産卵は1月中旬~3月下旬、孵化は3中旬~4月中旬、巣立ちは5月下旬~7月上旬です(環境省自然環境局野生生物課 2012)。
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新潟県では、他県に比べてやや遅い2月上旬から3月下旬に産卵し、3月下旬~4月下旬に孵化するものの、ヒナの成長にはばがあり、5月下旬~7月下旬に巣立ちます。
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繁殖期のイヌワシは人為影響に敏感であるため、生態調査や写真撮影を含めて営巣場所への接近は控えて下さい。

新潟県におけるイヌワシの獲物
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新潟県で確認されたイヌワシの獲物(捕獲失敗と死肉を含む)は19種類でした。種名は以下のとおりです。
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哺乳類:ホンドザル、ニホンノウサギ、ホンドギツネ、ホンドテン、ホンドオコジョ、ニホンカモシカ。鳥類:ヤマドリ、アオサギ(布川、1991)、ハチクマ、トビ、オオタカ、サシバ、ノスリ、クマタカ、フクロウ、ハヤブサ、トラツグミ。爬虫類:ジムグリ、アオダイショウ。
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積雪期の主食はノウサギで、無雪期になるとヘビに代りました。秋はタカ類の割合が高くなりました。



新潟県におけるイヌワシの狩場環境
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イヌワシは狩場としてどのような植生を好むかを、多雪地帯のある営巣期高利用域を対象に解析しました。
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植生は、落葉広葉樹林、低木草地、スギ人工林に分類しました。狩りの定義は樹冠より下に突っ込んだ場合とし、獲物を探しただけの場合は除きました。
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その結果、積雪期は落葉樹林のギャップ(すき間)を好み、無雪期には低木草地をやや好みました。一方、スギ人工林は積雪の有無を問わず忌避しました(柳川・田中 2010)。
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ただし、狩りに利用された落葉樹林のギャップを測量し、それと同サイズの伐採地をスギ人工林に設けたところ、スギ人工林で狩りをするようになりました。
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